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天性の「美味しい!状態に執着心」がある東京下町に棲息するおばさんのお料理・お菓子・道具・食材の他、散歩の記録を綴った日記です。by真凛馬


by mw17mw

最後の秘境 東京藝大と藝「大」コレクション

きっかけは何だったか忘れたが、去年の暮、色々検索していたら、「最後の秘境 東京藝大」という本と巡り合って、面白そうだし、台東区の図書館にあったので、予約したら、百何番めかであった。
その本が、このお盆の頃にようやくちょうど藝大コレクションに行こうと思っていた私に回ってきて、読んだのだ。

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(でも、この本、今でも人気があるらしく、台東区の図書館で「蔵書9冊で、予約者が81人」、文京区に至っては、「蔵書23冊で予約者が312人」、ま、現在では蔵書の数が増えているから予約してから受け取るまで半年以上かかることはないかも知れないが、すぐ読みたいとなったら、買うしかないかも<もしくはKindle>)

どんな本かというと、藝大の彫刻家の学生と結婚した作者が、奥さんの生態から、藝大生に興味を持ち、音楽美術を問わず色々な藝大生にインタビューしていくという話。

この本に描きだされた藝大生だけが藝大生ではないのだろうが、今まで私が思い込んでいたことが間違いだったり、「へ~、そうなのだ、藝大生」と新たに発見できるところも多く、元々軽く明るく、藝大生に愛情ある目線で書かれている本でもあり、スイスイ読んでいける。

私は、元々芸術系の友達少なく、藝大卒の人は、声楽家を出た女の人と10年くらい前一時期何度か会っていたことがあったくらい。
その子は、藝大って、「就職の世話はしませんから」という大学なのだと聞いていたので、それだけは知っていた。
だから、多分、声楽で食べていくのは無理と判断した彼女は親のコネで、普通の小売業に努める傍ら、ソムリエの資格を取ってソムリエになったのだって。
その女性は、幼女と妖女が彼女の中に同居している頭の良い女性に見えた。

私立の音大に行っていた、行っている友達は0、美大卒業者に一人知り合いがいたくらい。
だから、何となく、藝大は、ピアノや絵がうまいだけでなく、学科ができる人が入れる学校なのだと思い込んでいた。
そうしたら、この本でそのことは簡単に否定されていた。
ま、音楽の方は技術の成績順かも知れないけれど、美術の方は、アート心があるかないか、判断されることが多いらしい。
(私の好きなモダーンズという映画の中で、「アート、それは風のうわさ、アート、それは免疫のようなもの、持っている人と持たない人がいる」というセリフがあったっけ。)

それと、不思議なのだが、この日本において、就職のこととか、将来のことが頭になく、絵を描いていることが好きだ、物を作っていることが好きだという一念で暮している人たちばかりが出てくる。
(藝大に受かるくらいにあると、家族も応援しているとのこと。反対に、藝大に行きたい、芸術で生きて行きたいというお子さんを持つ親御さんは悩むだろうなと思う)

確かにね、「最後の秘境」とは良く言ったもの。
日本は、明治以降、立身出世を目指すような教育方針の下、全員、「立身出世」ができなくても、何かしら、心のどこかに立身しなくてはみたいな影響を受けているものかと思ったら、藝大は、とても大らか。
(でもね、岡倉天心という映画を見たせいか、明治時代だけかも知れないが、東京美術学校というと、派閥の争いがすごいというイメージもあった。
(岡倉天心の映画を見ただけで言うのも何だが、岡倉天心は自分では全く絵を習ったこともなく描けず、英語ができてフェノロサを初めとするお雇い外国人が見た日本の芸術に対する評価を一人だけ深く理解できていたのだ。
ま、本人の美を見る目もあったのだろうが、日本国内で、そんな外国人が見た日本の美なぞを意識していないで、切磋琢磨絵の修業をしていた画家たちには、「理屈ばかり言って」と思われたのかなと想像した。)

それが、この本を読むと、現在の藝大は、本当に、そういう価値観の争いはないみたいだし、競争社会日本と隔絶された秘境というのか、別天地というのか、原始世界と言おうか、我が道をそれぞれが歩む世界のよう。
その本では、そこで、伸び伸び自分の感性を生かして生きている人々が描かれている。(理解できない精神状態の人も2,3人出てきたが、その他の人はごく普通の人と思えた。)

勿論、音楽とか、コンクールに勝ちたい、勝たねばならないと練習している人も多いのだろうけれど、それも突き詰めていくと、自分の技術の最高を極めることがコンクールに勝っていくことに繋がるわけで、決して人と戦うのではなく、自分との闘いなのだ。

何ていうのかな、藝大に入る資格とか、アートに生きる人って、本当に自分が何かを作り出す状態から離れられない人であることが最低基準かも。(川端龍子の衣装に渡る展覧会を見ても、この人は絵を描かずにいられない人なのだと思ったけれど)
それが天才の最低基準で、その中で、世の中に名前が知れ渡る程の人になるのは、一人か二人なのだろう。
自分はそうはならないかもしれない、でも、美術から、物を作ることから離れられない人たちの学校のよう。

本当に軽くて面白くてスイスイ読める本であるし、読んで面白さが半減しては困るので、余り、ネタバレになることを書くのは良そう。(もっと軽く知りたい人とかは、Amazonの本のレビューを読むと良いと思う)

その他、この本では、美術の細かい技術についても触れてくれるので、今回、藝「大」コレクションに行ったら、今までより、どの作品も解説の意味がわかって、身近に感じられた作品も多かった。

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その本のどこかに、美術は、それぞれの作品を並べられるから良いと書いてあったが、本当に、一人ひとりの藝大生が「自分の考える美」を表現した作品が並んでいるわけで、自分の好みで、「好きな作品」は限定されてくるわけだけれど、そうでない作品も、「一人ひとりが考え抜いた美を表わしている」と感じることができる。

藝大生の卒業作品が展示されている他、高村光太郎の学生時代の作品、黒田清輝、杉山寧、小倉遊亀などの作品も展示されている。

何だかな~、誰それ一人だけの展覧会ではなかったせいか、「最後の秘境 東京藝大」を読みかけで行ったせいか、展覧会を見ていて、芸術家の数だけ美があるのだという気分で帰って来た。
また、展覧会を見ていて、世俗的な歌なのだけれど、「世界で一つだけの花」っていう歌の歌詞が頭に浮かび、この歌こそ、藝大美術の歌ではないかなんて考えたりして。(笑)

藝大美術館三階から上野公園方面を見た景色。
壁になっている建物は、藝大の美術学部の校舎だろうか?(右端からは上野公園になると思うのだが)


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9月の8,9,10日は、年に一度の芸大の文化祭「藝祭」とのこと。
高校生の時に行った切り、今年は見に行こうかな?

ネタバレになってしまうけれど、あの「最後の秘境 東京藝大」の本で、一番素敵な登場人物は、学長さんであった、藝祭のときの学長挨拶が素敵であった、今年もあるのかしら?興味津々。(笑)

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Commented by なご壱 at 2017-08-26 06:25 x
私も図書館で予約して 半年待って借りました。
無料で演奏などが鑑賞できる芸祭には、行って見たいと思います。
Commented by mw17mw at 2017-08-26 17:51
> なご壱さん
そうそう、私も現在の奏楽堂に行ってみたいです、もうちょっとしたら、無料の演奏会、研究いたします。
でも、あの本のおかげで、藝大に注目する人が増えているでしょうから、混むでしょうね。
by mw17mw | 2017-08-25 12:49 | 日常生活 | Comments(2)