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天性の「美味しい!状態に執着心」がある東京下町に棲息するおばさんのお料理・お菓子・道具・食材の他、散歩の記録を綴った日記です。by真凛馬


by mw17mw

小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代

題名から、この小林さんと栗原さんの比較の本かと思って、図書館から借りてきた。
そうしたら、このお二人についてもしっかり分析され、書かれてはいるのだが、それより何より、戦後から始まる、活躍してきた女性の料理研究家とその時代背景についても、きっちり記されていた。
そもそもは、戦後すぐに活躍された江上トミさんから始まり、それぞれの時代に必要とされた料理研究家が取り上げられ、ピークは、小林カツ代と栗原はるみにページが割かれ、最後は、ケンタロウ・コウケンテツ・栗原心平の男性料理研究家3人と高山なおみで終わっていた。

この本は、2015年5月発行なのだが、最近発行されたということが象徴的だ。
戦前の家父長制度が完全否定され、男女平等、結婚は両性の合意という価値観から始まり、それが徐々に社会に浸透してきたのが、戦後から今までの日本なのかも知れない。
それと同時に、日本料理だけではなく、世界中から新しい食材・料理に関する情報が入って来た時代。

そんな中、戦後の混沌とした時代から徐々に落ち着きを取り戻し、テレビも普及しだした時、求められたのは、誰もが納得する経歴・知識・人柄などだったのだろう、それが最初江上トミさんで始まったのかも。
その頃から、いつまでだろう、子供を育て終わった、色々料理を勉強してきた女性が「料理研究家」となったことが多かったけれど、いつの頃、小林カツ代さんくらいから、現役の子育て中のお母さんが「料理研究家」として活躍し出したのかも知れない。

やはり、その後の時代の流れが早かったのと、一番料理研究家を必要としているのが、結婚してお母さんになった人たちだったからかも知れない。

で、この本を読んでいると、やはり、昔から、料理が得意だったお母さんを持つ人が、結婚して、習った通りの場合もあるし、味の記憶だけの場合もあるのだが、料理を得意とするお母さんになって行くことがわかる。
そして、最後、ケンタロウ・コウケンテツ・栗原心平の男性料理研究家だって、結局、全員お母さんが料理が好きで得意だった息子ばかり。

そうなのだ、この本の最後までは、全員、「家庭として料理を大切にし、母手作りの料理を当然のように食べていた家庭の子」だけが、料理研究家になっていた。(ただし、高山なおみさんについては、詳しくないので、触れない)

それが、日本の戦後も70年にもなってくると、結婚しても、仕事を捨てる人は少なくなり、専業主婦の数が減っているし、離婚率は50%なのだって。
そうなると、お母さんがご飯を作ってくれて、夜でも朝でも、親とご飯を食べるのが普通という家庭はどのくらいの割合なのだろう?

スーパーに行って、レジに並ぶ時、前の人のかごの中身を見るとはなしに見てしまうと、皆、お惣菜とか、家に帰って、ラップをはがせば、すぐおかずになるものが入っている。(私も買うから仕方がないと思う)
日曜日の夕方、親と子、夫婦、皆で買い物に来て、それぞれ、「これを食べたら、自分が嬉しい」と思える料理を作る段階からの素材か、忙しくて作る時間がなかったら、出来上がりのお惣菜をかごに入れていく風景を見て、これが現代だなと思う。
ほのぼのとした風景で、これはこれで良いのかなと思う。(というのは、お金だけ渡されて、お弁当を食べつないでいる家庭の子も多いという話を良く聞くので。)

そうそう、この本を読んでいて、最後の3人の男性料理研究家は、何といっても、料理が得意なお母さんの下で育った人たちだと気づいた時、こんな、女性が「職業・職業」と家庭に入るより、一生の職業を求め、自分らしさを求めている時代、そうして、お金を稼げば、相当の家事を誰かが代行してくれる時代になったと思う。
(職業職業と言う女性が多い感じはするけれど、今の時代、女性の価値観が多様化しているという言い方の方が今の時代を表しているかも。)

そうなのだ、何やかやと言って、今までは、「家でお母さんの作った料理を食べる」のが当たり前の日本の家庭が、今では当たり前ではなくなっっているような気がするのだ。

今後、どういう環境に育った人が「料理研究家」になるのだろう?と思うと、全く見当がつかない。

ま~ね、世の中、インターネットの時代になってしまい、レシピを検索するだけだったら、Cookpadがあるし、Cookpadの一つひとつのレシピの方が、等身大の仲間のレシピという感じがするかも知れないし、今後は、一世を風靡した料理研究家の出現は無理なのかも知れない。

と思ったのが、この本を読んだ最初の感想。(続く)
by mw17mw | 2015-09-20 22:34 | 料理よも山話 | Comments(0)