本来、自由学園及び羽仁もと子さんについて語るとき、その思想や教育方針・家庭に対する考え方・生き方などを抜かしては語れないのだが、そこまで書くと、余りに大変なので、今回は、建物についてだけ述べる。
番組自体、丹下健三の関口教会聖マリア大聖堂の時のような感激はなく、ちまちました建物に見えた。
しかし、それは、単に、私が「巨大な建物に感激するタイプ」だから、そう見えたのかも知れない。
でも、とにもかくにも、この「自由学園明日館」は、国の重要文化財であり、見る価値はあると思った。
確かに、実際に見学してみて、「一流」とか「超一流」とか「世界的」と言われる建築家の作品は(安普請な作りでも)本当に素晴らしいと実感した。
で、
自由学園明日館のHPを調べたところ、この明日館は、月曜を除く平日には内部を見学できる他、月に一度、休日見学日と毎月第三金曜日に夜間見学日を設けているようで、1月の休日見学日は、5日とのこと。
ちょうどお正月休みの間だし、やることもない私にはうってつけなので、行ってみることにした。
メル友さんから、決められた時間に始まるガイドツアーがあるので、それに入って説明を聞くと良い、また、切符はお茶とお菓子付きがお得とのアドバイスがあり、それを頭に入れ、地図を見ると、西口のホテルメトロポリタンの前の通りを渡り、38番地というブロックの路地を入っていけばどうにか着きそうな気がして、ホテルメトロポリタンの位置と38番だけを覚えていざ出発。
で、実際、メトロポリタンの前の通りを渡って38番地の路地を入っていくと、その後は、ところどころに、明日館への方向を示す標識があり、簡単に辿り着けた。
細くて曲がりくねった道を歩いていくと、両側、住宅街で、およそ「池袋」とのイメージとはかけ離れている地域。(何かに、「池袋」ではなく「元目白」と書いてあったから、もしかしたら、旧町名は「目白」なのかも)
後から、ガイドツアーの方が説明してくださったけれど、池袋は、戦災にあって、駅の周囲はことごとく燃やされたのだけれど、今のホテルメトロポリタンのところがその頃森であったので、それが防火林の役割を果たしたのか、それより西は焼けなくて残ったということ。
婦人之友社の大きな建物の横の路地を入ったら、そこからは、大空が広がる静かな別世界。
で、実際の建物は、テレビで見るより、相当素敵で「さすが!」という建物であった。
何だろう、小中学生の女の子のための学校として、設計され、建てられているのだけれど、細部にわたって、「考え抜かれた統一感のある美意識」が感じられ、こんな環境で勉強できた人たちは幸せだったなと思えた。
フランク・ロイド・ライトは、建物の設計だけでなく、中で使う調度品も設計したとのこと。(中の調度品が他の人のデザインだと、統一性がなくなり、自分の設計した建物でなくなるということらしい)
また、見学客なのだが、日本人だけでなく、外国人の見学客が結構いたのにびっくり。
やはり、この自由学園明日館は、フランク・ロイド・ライトの作品として世界的に有名なのだなと改めて思えた。
(ガイドツアーの方のお話によると、フランク・ロイド・ライトはお金持ちやお金がふんだんにある人の家や施設を作っていたのに、なぜ、この羽仁もと子の小さな学校の設計をしたかというと、フランク・ロイド・ライトには、羽仁もと子のような教育者のおばさんがいて、アメリカで私塾を経営していたとか。羽仁もと子と知り合って、極東のこんなところに、自分のおばさんのような人がいるということで協力したくなったのではとのこと)
中に入って、まず、広間(礼拝が行われた場所)のようなところで切符を見せ、コーヒーとお菓子を受け取り、休んだのだが、結構見学者はいたものの、誰もコーヒーやお菓子を食べていなくて、不思議だったのだが、何でも、今日は一年の初日ということで、お汁粉が11時からふるまわれるとのこと。(ほかの皆さまはそれを知っていたか。私も切符を買うとき、11時からお汁粉がふるまわれますと言われた記憶はある)
(お昼頃、この礼拝が行われた場所に行ったら、お昼以降見学される方はお茶を飲んでいる方が多かった。)
1Fの壁には、石が貼られ、石の暖炉があって、火がついていた、テレビでは紹介されなかったけれど、こういう石造りの作り付けの暖炉とか、いかにも外国人が設計したという感じだし、石の使い方が素敵だと思った。
この学校は、婦人之友社の出版物の利益で作られた施設で、決して、資金が潤沢ではなく、例えば、べニヤ板を使いながらも、創意工夫で美しい学校になっていた。
で、11時になったら、二階の食堂へいらしてくださいということで、そこでお汁粉をごちそうになったが、美味しかった。
また、一階の暖炉の熱が二階の床から伝わる形になっていて、とても温かく、暖炉の熱は心地よかった。
ということで、お汁粉を食べ終わった後、人数が多いので、2組に分かれて、説明員の案内で、建物を色々見学することができて、とても良かった。
で、話は端折るが、結局、この日は、講堂で、1時から「ピアノコンサート」が開かれるとのこと。
お腹もお菓子とお汁粉を食べているので、お昼すぎてもお腹が空いていなかったし、時間的にもちょうど良かったので、そのピアノコンサート40分も聞くことができた。
東京音楽大学の大学院生の男性のピアノだったが、とても上手で、心地よかった。
ここは確かに見学に行く価値がある。
ガイドツアーは平日だったら午後2時から、休日は11時と2時、夜間の時は、19時からだったと思う。
また、休日見学日と無料のコンサート日は同じようだ。
(Googleにアドレスを持ってらっしゃる方は、アドレスでログインして見ていただくと、説明も読めます)
建物も素敵だったけれど、思いもかけず、火の入っている暖炉にあたることもでき、お汁粉をいただき、ピアノ・コンサートも堪能する3時間以上の至福の時を過ごせて、とても楽しい一日であった。
(そういえば、昨年末の関口教会のコンサート、今年の自由学園のピアノ:コンサートと、最近は、美しい建物に美しい音楽に恵まれている感じ、これも素敵なことだな)
何でも、木造の重要文化財の中で、「火を焚く」ということは大変なことだそうで、消防署に届け出や許可が必要とのこと。
それで、この自由学園明日館においては、年に、4,5回くらいしか、暖炉に火を入れることはないとのこと。
絶対暖炉に火が入るのは、11月~2月までの夜間見学日とのこと。(年の初めに必ず火が入るかどうかは不明)