浅草「鳥多古」(とりたこ) 2/2

この日、私たちが案内されたのは、厨房との境のカウンター。
おかげで、厨房というか、焼き鳥を焼いている女主人が良く見えた。
とは言っても、おしゃべりしながらだから、たまにしか目が行かなかったが、焼き鳥を10本くらい焼いているときのその表情の厳しさが印象的だった。
この女主人の方が、全て一人で調理しているようだが、本当に集中されているようで、肩の辺りに緊張感がみなぎり、目が釣りあがっているような表情に見えたくらい。
(でも、全ての料理を出し終わった後は、優しい顔に戻っていた)

さて、次の料理は、「鶏のたたき」、鶏すき風のお鍋とのこと。
このお鍋の最後にうどんを入れて〆て、みかんが出てコースは終了するらしい。
(あ、後、お漬物が鉢に沢山出た)

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全ては、お店のお姉さんが教えてくれる。
汁が煮える間に、鶏のたたきに卵黄を良く混ぜておいてくださいよ、とのこと。
で、汁が煮えたら、手羽先を沈める。
(手羽先は、最後の最後まで煮ておくと、トロットロになって美味しいそうだ。)
そして、スプーンで丸くした鶏のたたきを人数×2落としていく。
つくね団子の表面がお醤油色になったら、食べてねとのこと。

確かに、時間はかかったが、つくねが薄っすら茶色になったところで食べたら、すき焼きのたれがつくねの内部まで入り込んでいて、とても楽しかった。
最後の手羽先も、コラーゲンが出てきて、つるんとしていて、お肉は柔らかく、これまた、たれが中までしみこんでいて美味しかった。

(で、お鍋料理なのだが、最近、コンフィ等に凝っていて、お鍋に温度計を入れて料理をしているのだが、すき焼きやオイルフォンデューなぞの、蓋をしないで、グツグツ煮ている温度がだいたい75~80度くらい。
そのまま煮ていると激しくグツグツ言い出して、ガスを細めようかと思う頃が90度だと思う。
物を美味しく煮る温度は80度とのことだが、お鍋って、ちょうどその80度前後なのだ。
だから、お鍋料理で煮たものは美味しいのかも知れないと思った。)

他のお野菜やたたきのお団子、野菜やお豆腐、白滝なぞを、生卵につけていただく。
この生卵が、新鮮且つ味が濃く、とても美味しかった。
知らず知らずに食べ終わったとき、鉢に残った生卵を飲んでしまった私、そのくらい、美味しい卵であった。

このお料理も固いところが全くなく、柔らかくて味の染みた鶏肉ばかり。
何で、たたきと手羽先なのだろうと思ったが、きっと普通のももや胸肉をそのまま鶏すきにするより、柔らかく仕上がるのだろう。
全部のお料理の中で、この鶏のたたき鍋が一番気に入った。
私も今度家で鶏すきをするときには、手羽と叩いた肉か、挽肉で真似してみようと思う。

ここのお料理は全て、華々しく「美味しい!」「他にはない!」という感じのお料理ではなかったが、何か食べ終わって、お腹一杯なのだが、もたれないし、お腹にも心にも優しい感じであった。

その後、喫茶店でお話してから家に帰ったのだが、次の日の朝まで、鶏肉の美味しさ、柔らかさ、優しさが残っているような感じであった。
そして、気が付いたのだが、「一切れたりとも、火を通し過ぎたり、焼き過ぎたりして固くなった鶏肉がなかった」と。
全て柔らかく、適温で程良く調理された料理ばかりであった。
その「適温で程良く調理された鶏肉」と「厨房で、怒っているような表情で真剣に、焼き鳥の様子を見ていた女主人の様子」が結びついた。
鶏料理と言っても、あのくらい真剣に向かい合って料理しないと、一個の失敗も無い料理はできないのだと。(10本くらい一度に焼くわけだが、全て同じ仕上がりに焼き上げると考えると確かに、集中しないとできないかも)

あのお店は、ご主人が亡くなって、あの奥さんが後を継いだと聞いている。
ご主人が生きていた頃は、きっと、ご主人が厨房で、奥さんがサービスだったのだろう。
ご主人亡き後、奥さんは、見るとはなしに見ていたご主人の調理を思い出しながら、頑張ってお店を再開したのかしら?
きっと、あの奥さんのお料理がご主人存命中と変わらないと評価されること、お店が同じように繁盛することが、奥さんのライフワークかも知れないと思った。

そう、あそこのお料理は、派手な美味しさはないが、とても心のこもった、丁寧で、優しくてヘルシーなお料理なのだ。
鶏肉自体は、那須鶏という鶏で、ヘルシーで美味しいが、東京軍鶏の力強い派手な美味しさには負ける。
また、鶏料理としては、野風僧の上海チキンのような色々なテクニックを積み重ねた結果、食べた途端美味しい!と思うような料理ではない。
でも、このお店で、出されるコース料理を全て食べ終わると、全てが柔らかく程好く料理された鳥料理だと気づき、心と体が優しくほのぼのするような料理であった。
これはこれで「価値がある」と思う。

それにしても、鶏すきなぞは、やはり、冬場が美味しいと思った。
寒い冬の夜にわざわざ食べに行っただけのことはあった。
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by mw17mw | 2007-01-15 16:41 | 飲食店・菓子店 | Comments(2)

Commented by 油売りエマ at 2007-02-05 19:16 x
こんにちは!鳥多古で検索していたらなんと!
私も今月初体験なんです。楽しみ~。
ちなみにお酒のラインナップはどんな感じでした?

Commented by mw17mw at 2007-02-05 21:18
>油売りエマさん
お久しぶりです。
お酒のラインナップ、そんなに覚えてないのですが、小さなお店で、従業員全員女性だからか、銘柄はそんなに多くなかったです。
ビール・ワイン・日本酒・焼酎揃っていますが、種類は少なかったかも。
ビールは地ビールだったと思いました、これは私の好みに合わず、「何かビールじゃないみたい」と思いました。(茶色いのも白いのも)
後、覚えているのは、常連さんの焼酎キープが並んでいたことぐらい。
何か参考になる記事はないかなと探したら、かろうじて下記ページが出てきました。
http://homepage3.nifty.com/thanksfordiningrooms/yakitori05.htm
楽しんできてくださいね。