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天性の「美味しい!状態に執着心」がある東京下町に棲息するおばさんのお料理・お菓子・道具・食材の他、散歩の記録を綴った日記です。by真凛馬


by mw17mw

銚子のお醤油屋さん−ヤマサ醤油とヒゲタ醤油

先日、「桜を求めて」という題名の千葉県銚子市や成田市を回る日帰りバスツアーに参加した。

銚子のヤマサ醤油の工場に行ったのだが、日曜日だったので、当然工場は稼働していなかった。
でも、観光ルートに組み入れられているからか、ヤマサ醤油に関する映画が上映され、売店では、ヤマサ醤油の色々な製品を買うことができたのだ。

ヤマサの歴史を描いた映画によると、銚子と言うのは、和歌山県湯浅という「日本における醤油の発祥の地」から黒潮に乗って移住した人が住み着いた土地で、和歌山と銚子界隈では同じような地名が残っているのがその証拠とのこと。
そして、湯浅の隣の広村出身の初代濱口儀兵衛が1645年に、湯浅の醤油づくりの製法を銚子に持ち込み、ヤマサ醤油を創業したとのこと。
その後の歴史もなるほどと見終わった後、バスで銚子市内を走ったり、他の土産物センターに行ったりしたら、漁港に近いところでは、結構ヤマサよりヒゲタ醤油が強い感じであった。

そうそう、銚子のお醤油メーカーは、ヤマサだけでなく、ヒゲタもあるのだ。

そして、お昼も、団体観光客向けの飲食店で食べたのだが、その時、テーブルには、ヤマサと書いたガラス瓶に入ったお醤油と、ヒゲタと書いたガラス瓶のお醤油があったので、2つの醤油皿にそれぞれ入れて、お刺身をつけて比べながら食べた。(隣の人が生魚が食べられないとのことで、お刺身と醤油皿を私にくれたのだ。)
そうしたら、ヒゲタの方がまろやか、ヤマサの方が塩味がきつい感じがした。(入れ間違えていなければ)
一概に「お醤油」と言っても、ずいぶん味が違うのだと思った。

その時、隣の元酒屋の奥さんが、ずっと以前我が家の近所にあったいなり寿司屋さんにお醤油をおろしていたのだけれど、そこは絶対ヒゲタ醤油で、他のメーカーの醤油ではだめだったという昔話を教えてくれた。
そのいなり寿司屋さんは、梅沢さんという子供のころの私の贔屓のお店だったので、「へ~、あそこはヒゲタ醤油の味だったのだ」とわかった。

そうだよね、確か、東京のお蕎麦屋さんの殆どはヒゲタ醤油、家庭向けはキッコーマンと良くいうものね。
ヒゲタは、東京の和食全般のプロに人気があるのかも。

そんなこともあって、家に帰ってから、ヤマサ醤油とヒゲタ醤油のことを調べたら、両方とも社長が濱口さんで、どう考えても親戚、
どういう関係か、両方の会社のHPなどで歴史を調べても良くわからなかった。

関東における醤油の歴史を簡単に書くと、

1616年(元和2年)
下総国・銚子(現 千葉県銚子市)の豪農、第三代田中玄蕃が、摂津国・西宮(現 兵庫県西宮市)の酒造家、真宜九郎右衛門の勧めで、銚子で醤油の醸造を始めた。

1645年(正保2年)
初代濱口儀兵衛が紀州から銚子に渡り、ヤマサ醤油を創業。

1697年(元禄10年)
第五代田中玄蕃が原料に小麦を配合するなどして製法を改良し、現在の濃口醤油の醸造法を確立させた。

そこまでの歴史では、偶然、銚子に二つの醤油蔵ができたようである。

明治時代まで、ヤマサ醤油は、初代の儀兵衛が製造、その兄が販売を担当して、代々、それぞれ、跡取りが儀兵衛と吉右衛門を名乗って継いで行った。

その後のことを書いてあるものが中々見つからなかったが、一つだけ、殿の気まぐれ散策日記 「身近な有田で 偉大なる一族の歴史と共に、醤油で財を築きあげた濱口家の歴史に触れてみたいと思います。」が見つかった。

それによると、

1906年(明治39)
田中玄蕃の出蔵(でぐら)が売りに出た時、8代目吉右衛門の弟吉兵衛は、7代目儀兵衛の勧めでこれを買い取った。
この時、儀兵衛が以前に廃業した醸造元から譲り受けていた“ジガミサ”という商標を譲渡された。

ということで、明治39年に、田中玄蕃の醤油蔵が、濱口家のものとなって、銚子の二大醤油メーカーはどちらも社長が濱口さんになったらしい。
だから、明治39年以降のヒゲタ醤油は、ヤマサ醤油とは社長ベースでは親戚ではあるものの、資本関係も技術関係もないもよう。
これで謎が解けた!(ヒゲタ醤油は、田中玄蕃が作った醤油蔵であり、その後ヤマサ醤油ではない濱口家が買い取り、その技術を守り発展させているのだ)

それにしても、濱口家は、お醤油で財をなし、何と、ラストエンペラーの弟である愛新覚羅溥傑さんの妻の浩さん(貴族)のお母さんは濱口家(ヒゲタの方)の出だし、美智子皇后とも姻戚関係にあるとのこと、家系図を見ると、本当に華々しい一族である。
(一見、ヒゲタ醤油と聞くと地味に聞こえるけれどね、明治39年から今までの大醤油メーカーだもの、生まれた財はすごい額だろう)
by mw17mw | 2016-04-27 22:04 | 調味料 | Comments(0)