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天性の「美味しい!状態に執着心」がある東京下町に棲息するおばさんのお料理・お菓子・道具・食材の他、散歩の記録を綴った日記です。by真凛馬


by mw17mw
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最近読んだ本の中から-「英国一家、日本を食べる」

最近読んだ本の中から-「英国一家、日本を食べる」_d0063149_09110295.jpgこの本の存在を知ったのは、確か、今から半年以上前、アキバのヨドバシの中の本屋で、山積みされたのを見た時だ。

すぐにでも読みたかったが、最近、本を購入することにものすごく抵抗を感じるので、買わなかった。
家に帰って、調べると、近隣5区の図書館全てにあるけれど、予約人数がどこの区でも、50人を超えていた。
それでも台東区は蔵書が2冊あるので、1冊しかないところより回ってくるのが早いだろうと予約しておいたのが、つい先日順番が回ってきたのだ。

最初に、ヨドバシAkibaで、目次を見た時、「新宿・思い出横丁」とか「カニとラーメン」「流しそうめん」みたいな文字が目に入って来たので、日本に関心を持った英国人一家が日本にやってきて、ラーメンを食べたり、デパ地下巡りした感想が載っている程度の本かと勝手に想像していた。

そうしたら、そんなことはなく、だいたい一番最初から、「英語で書かれた日本料理の情報源として、世界中の日本料理愛好家にとってバイブル的存在は辻静雄の「Japanese Cooking;  A Simple Art」という本」ということからスタートしたのでびっくり。
作者が、日本と韓国のハーフの料理人の男性に、この本を渡され、日本料理のうんちくを聞くうちに、自分の目で、「日本料理の現状」を探究したく、日本にやってきたようだ。

それで、著者の経歴を見ると、フードジャーナリストとある、そうか、ただのイギリス人一家が日本にやってきて、「デパ地下で色々食べられてびっくりした」程度の話ではなく、日本の料理界のオーソリティに簡単に会えるような一流のフードジャーナリストのお父さんを持つ一家がやってきて、3か月、日本各地を回ったり、色々な料理や食材のオーソリティを訪ねながら、日本の味や日本料理・食材の未来を研究する話なのだと理解できた。
(考えてみれば、それはそうだと思う、親子4人、わざわざ日本食を食べに、日本に3か月の予定で来るなんて、食関係者以外の普通のサラリーマンはやらないだろう)

辻静雄という言葉がしょっちゅう出てくる本なので、私のような年代で、海老沢泰久作の辻静雄の軌跡を描いた「美味礼賛」 という小説を読んだ経験があったり、戦後日本の外食産業の発展や調理師学校に関する発展に興味があった人の方が面白く読めると思う。
(この本によって、外国人から見ても、辻静雄の後継者はいないで、今、日本では、服部幸應さんと、辻静雄さんの息子の辻芳樹さんの二大巨頭時代なのだそうだ)

日本食自体、また、日本人の味覚の追い方について、自分が思いつかなかったような分析も載っているし、知らなかった知識も学べるし、壬生京料理 という会員制の普通の人ではいけないお店に行った話も載っていて、興味深い。(私はそのお店の名前すら知らなかった。)

また、彼は、東京→札幌→京都→大阪→福岡→那覇に長逗留をして、色々な自分の興味を追及する。
彼からすると、懐石・たこ焼き・お好み焼き・ラーメンが並列で語られ、「なぜ、辻静雄はたこ焼きやラーメンに興味を持たなかったのだろう?」という疑問を持つ。

ま~ね、もしかして、辻静雄がもっと長生きしたら、興味を持ったかも知れない。
でも、「本物の日本料理・西洋料理を作れる調理師を輩出する料理学校を作る」ことが彼のライフワークであったわけだから、そういう本流でないものには目が行かなかったと私は思う。
それはやはり、辻静雄が活躍した時代は、戦後の混乱期は終わっていたけれど、まだ、一般人が海外に渡航することが難しかったし、欧米からの色々な食料が輸入されていない時代であったことが大きいと思う。
辻静雄が恋愛した相手が大阪の料理学校の娘さんで、結果、結婚して養子になって、この業界を知り始めたときに、欧米を旅行する機会に恵まれ、今まで日本で食べていた西洋料理が本場の国々の本物でなかったことや本物のフレンチの美味しさに驚き、日本でも本物の料理を教える調理師専門学校を作ることを天命と考え、実行していくわけであるが、そこらへん、美味礼賛を読まなくてはわからないのだろうけれど、美味礼賛は、多分英語には翻訳されていないだろう。(この本に日本の懐石を完成させたのは、「北大路魯山人」と「辻静雄」と書いてあったが、私ごときが言えることではないけれど、そのお二人に「湯木貞一」も加えた方が良いと思う。)

とても、勉強しているし、良い本だと思う、でも、この本の弱点を見つけた、ラーメンはとても深く研究し、気に入ったようだが、日本のもう一つの国民食と言われるカレーについては、ノータッチであること。(笑)
やはり、インドの以前の宗主国であったイギリス人としては、日本のカレーは気に入らなかったのかな?(猫またぎ的食べ物?)

それと、この本のAmazonにおけるレビューを読むと、原文で訳されなかったところが多々あるそうなのだ。
どうせなら、包み隠さず全て訳してくれれば良いのにね~。

一度読み終わったのだが、再度読み返してから、図書館に返そうと思う。

私の読後感としては、今の時代、日本人が美味しいと思うものは英国人も美味しいと思うものなのだということ。
(外国人が日本の味に慣れて来たのかも知れない)

by mw17mw | 2014-04-29 09:15 | 日常生活 | Comments(0)